師走浪人セブン
『 ねがぽじ 』 (前編)
女として育ってきたまひるが実は男だと判明した。
その時、友達は、家族は、愛する人は……!?
人の愛と友情に真っ向から挑戦する問題作。

『 ねがぽじ 〜お兄ちゃんと呼ばないでっ!!〜』

2001年4月6日発売予定。乞うご期待。


……本当か?




この先は激しくネタばれなうえ、あまりに内容が生々しいため、
本作に何らかの思い入れがある方ほど嫌な思いをすることが予想されます。
それでもかまわない、真実を求める旅へいざ行かん、という奇特な方は
下の“READ MORE”をクリックしてくだされ。




シナリオライターが危機感を抱く時。
それは、前作があまり売れなかった時。

はろあげの売り上げはぶっちゃけイマイチでした。
次も売れなかったらやべー。
また無職か。それは困る。
というわけで、枕はシナリオの製作責任を会社の役員にも分担させようと画策したわけです。

「企画を三つほど用意したんですけど、見てもらえます?」

一応、三択の形は取っていますが、内容を読めば答えはおのずと決まってたりするのです。

A案:本命。超本命。徹夜の作業が続く文化祭前夜、突然の……おっとこれ以上は言えない。
B案:一発ネタ。面白そうだけど明らかに頭弱そう。馬鹿馬鹿しすぎてまずこれは選ばない。
C案:二択では何なので。いかにも駄目そうな内容。

シナリオライター二年目にしてこの悪知恵。
集まった社長・プロデューサー・原画に、しれっとして企画案を差し出す。


「う〜ん、Bかな」
「この中だとBだよね」
「俺もBかなぁ」


 Bなのかよ!?


世の中、わからないものです。
取りあえず頭を抱える枕。
もちろん、B案はあくまでA案の対抗として用意しただけ。
その内容といえば、家に例えるなら門柱と表札だけで土地の仕切りすらまだの状態。
設定も何も完全に白紙。まさしくゼロからのスタート。
いえ、むしろマイナスです。
実際に自分が書くとはつゆほども思っていなかったので、B案の内容はひたすら安直で破天荒。
これをいったいどうやって物語の形に仕立てろと。
それにしても、何という不測の事態……。
まさか、
『今まで女の子だと思ってたけど
    実は男の子だったんです!』

などという頭の悪そうな企画が通ってしまうとは!


こうして、のちに『ねがぽじ』と名づけられる枕流第二作の企画はスタートしたのでした。
何という無謀。
しかし、自分から言い出したことである以上、シナリオは何としても完成させなくてはなりません。
当然、この時点ではあらすじもへったくれもなし。まったくの未定。
まさに前途多難。それどころか、一筋の光明さえ見えない状況。
明日はどっちだ!?


数日かけて自分を納得させ、バカコメディを書くための準備を始めるわけですが、
ここに最初の転機が訪れます。
ネットなどでトランスジェンダーについて調べるうち、
これはふざけ半分で取り上げてよいテーマではないことに気がついたのです。
まずは気を引き締め、本格的に枕の脳細胞が旋回を開始。
方針転換。面舵いっぱい。

あくまで秘密裏に。

いや待て、それは勤め人としてどうなんだ?
しかし、正直に話せば周囲から反対されるのは火を見るより明らか。
何より、自分にはこれがよいものになるという確信がありました。
幸い、会社の放任主義もあり、
音声収録まで誰も私のシナリオに興味を示すことはなく……。

いや……それはそれでどうかと思うぞ……。

まあ、今だから結果オーライと言える話なわけで、
これからシナリオライターを目指す方は決して真似をしないでください。
それで会社が傾いたとしても当方は責任を負いかねます。


そもそも、なぜ
『今まで男だったけど何かの拍子で女になっちゃった』
ではなくて、
『女の子として生活してきたのに、ある日突然、自分が男だということが判明した』
なのか。

まず第一に、前者はすでに市場にもありふれていたこと。
そして、より重要な理由として、
男の持つ潜在的な願望としては後者の方が近いだろうというライターとしての直感があったことです。
その点も、私が確かな手応えを感じた由縁のひとつでもあるのです。

何はともあれ、問題が山積みながらも取りあえず企画はスタートしたわけですが、
同時に、無理難題をどうにか物語の形にしてしまう手腕が養われたのもこの時だったように思えます。
それ以後は、もっぱらその奇妙な手腕ばかりをあてにされるはめになって現在に到るわけですが。
まさに自業自得。


  中編に続く!