師走浪人セブン
京都で花見3
突き刺さる視線、視線、視線。
うわ、恥ずかしっ。

保津川下り。
その名が示すように、峡谷の底を流れる保津川を上流から嵐山へ向かう船遊び。
船は笹の葉のように細長く、一艘に乗る人数はおよそ20人ほど。
しかも、こちらは堤の上にいるため、船客のほぼ全員の視線を受けることに。
枯れ木のような桜の下で、敷物もなしに宴会をしている野郎のみの四人組。
自分で言うのは何ですが、あまりにも怪しすぎる。

「うわ〜、居たたまれねぇ〜」
「通報されたかな」
「心配するな。されるとしてもあの船が嵐山に着いてからだ」
「しかし、携帯のアンテナ立ってる……」
「まじ!?」
「ドコモは微妙だ……」
「ウィルコムが元気なのは近くに無人とはいえ駅があるからか」
「逃げた方がいいかな。河川監視員とか来たら厄介だし」

そんな話をしている間にも、次の船が。
花見と紅葉の季節は保津川下りもピーク。
まさに舳先を艫に擦るようにして、次から次へと船が、船が、そして満載の観光客が。

視線が痛いっっ。

「考えてみたら俺たちの方が迷惑なんだよな」
「せっかく観光に来て景色を楽しんでたら、いきなり野郎四人が酒盛りだし」
「取りあえず無害であることをアピールしてみようか」

にこやかに手を振る。

パチッ!

写真撮られた! それも外人に!


当たり前ですが、今回の花見は保津川で晒し者になるために来たわけではありません。
実は日本酒の試飲が目的なのです。
私は日本酒というものを(ほぼ)飲んだことがない。
それじゃあ、まずはうまい日本酒というものを味わってみるか!
というのが花見を呼びかけた発端。

枕「日本酒の調達はまかせてくれ! 純米大吟醸、無濾過、生原酒を持ってくわ!」

駄目だ、こいつら明らかに某漫画にかぶれてる。
まあ、そんなわけで、ろくに知識もない私が聞きかじりだけで梅田をかけずり回り、
すべての条件を満たした日本酒をどうにか調達。
いやあ、素人というものは怖いもので、
日本酒だからこんなものかな?
と思ってたら普段飲むにはちょっと躊躇するクラスの酒だったみたいです。
しかも、酒盛りの後は半日ほども常温で持ち歩く始末。
酒飲みの人が
「別にいいんだけどね、うん……」
みたいな顔をしてた理由が今ならわかります。
帰宅後にもう一度飲んでみると、もろみ臭さがてきめんに上昇。
何というもったいないことを……。

で、時計の針を戻して、酒盛りの最中。
肝心の味はというと、よく使われる表現ではありますが、
口にした瞬間は真水のよう、その後すぐにもろみ香とアルコールが一気に来ます。
しかし、そのどちらもキレがあるので、アルコール度数が高いわりにはぐいぐい飲めてしまう。
ストレートで飲んでて少しもろみ香が気になるかな……と思ってたところ、
ロックにしてみるともろみ香がさらに鋭くなり、コクは減りますがさらに飲みやすく。
温度でこんなにも味わいが違うんだ……。
もろみ香が引っ込んだせいか、白ワインにも似てる。これがフルーツ香というやつだろうか。
さらに酒が進む。
ごくごくごく。

『飲み過ぎ!』

保津川下りからツッコミが入りました。
面子の中でアルコールに弱いのは私ひとり。当然、私だけ顔が真っ赤。
やばい、この酒は進みすぎる。
とか言いつつ、別の人が持ってきたウィスキーも試飲。
こちらもかなり高いものらしい。
飲んでみて……最近は蒸留酒の人気が高いのも頷ける。
酒として必要なもののみを揃えたという感じ。
酒の好みはそれこそ好きずきですが、より広く浅く愛されるのもわかる。
酒としての機能が高い。

取りあえず、酒の方は堪能。
しかし、花見の方は枯れ木一本……。
いやいや、我々にはトロッコ列車がある!
現在位置の保津峡駅は、実はトロッコ列車の途中駅でしかない。
これからの予定は、まずJRで保津峡のさらに奥まで進み、トロッコ列車の始発駅から終着(嵐山)まで桜見物なのだ!

「まったりしてるところ悪いんだけど、もう電車来そう」
「次は?」
「これに乗れなかったら帰りのトロッコ列車が絶望的」

は〜〜〜し〜〜〜れ〜〜〜!!!

酒かっくらった直後に長距離走。
何という無計画。

「ちょっと、トイレ……」
「誰だお約束な奴は!?」

どうにかこうにか定刻の一分前にホームへ滑り込む。
しかし……。

「……電車来ないね」
「遅れてるのかな? JRにしては珍しい」
「どうする? トロッコ列車の出発時刻もあるんだけど」
「そう言われても……」
「あと五分以内に来なかったらやばいかも」

来ない列車に野郎四人で気を揉んでいると、無人だと思われた駅に放送が掛かる。

『列車の故障のため、列車の到着が一時間遅れます』

な、なんだってぇえええ〜〜〜〜〜〜!!??

どうなるどうする??




続く!




次で最後らしい。